大晦日に、アマヌサ・ホテルという所で、ニュー・イヤーズ・パフォーマンスが行われ、私はデュエット舞踊を踊らせてもらいました。
デュエットのお相手は、超大御所、泣く子も黙る(?)バパ・マデ。
バリ島の人間国宝的なバリ舞踊家、あの「イ・マデ・ジマット氏」だったんです。
毎度の事ながら、ぼやけ写真。スミマセン
コンテンポラリーは解釈が難しいので、なにかと避けている古典好きの私ですが、「今度、ジマット氏とコンテンポラリー踊らないか?」とグループのボスから声を掛けられた時は、も~う、何も考えずに「やるやるやるるる!!!」の返事をしました。
言ってすぐ「ああ~!!軽はずみなああ~!!!」と身の程知らずの自分を呪ったけど。
でも、ジマット氏と舞台で踊るなんて、こんな有り難いチャンスは2度と来ないだろうし。
さらに、あの古典舞踊家として世界に名高い氏がコンテンポラリーに挑戦・・・私も、ここでガッツリと挑戦しとかないと、勝負に負けるぞ(?)と、意味不明の言い聞かせを自分自身にして、本番に挑みました。
正面からの写真でないのも影響し、思いっきり私の踊りの薄っぺらさが滲み出てますな
設定は、漁師の夫婦。バリ舞踊の古典曲「ヌラヤン」をベースにした曲を使います。
ピアノと竹笛スリンが絡み、ジャワの楽器とバリの楽器がコラボという、まあ、変わった演奏に乗せての踊りでした。
他の曲も、プチ・バラワン(バリ島を代表するエスニック・フュージョン・バンド)みたいで、カッコ良かったです。
そんな格好いいグループの演奏なのに、
わたし、何やってるんでしょうか・・・
写真見てください。これは踊りなんでしょうか・・・必死感が漂ってませんか?
もちろん御客様に喜んでもらえるよう、一生懸命踊っておりましたが、ちょっと緊張が踊りに出すぎてる??? バリ舞踊だったら、インプロビゼーションで踊れますが、この~・・・突然走りだしたりとか、手を繋いで歩き廻ったり、拍手したり、じゃんけんしたり・・・いやはや、難しいんです、やはりコンテンポラリーは。
結局私はバリ舞踊から離れきれず「コンテンポラリー」ならぬ、創作バリ舞踊劇みたいになってしまいました。
せっかくのチャンスを頂いたのに、ああ、自己嫌悪・・・
でも、コメディ風の作品として、御客様にニコニコしながら楽しんでもらえたのは、なにより。
それにしても、ジマット氏と踊っている時の、なんとオーラが強いこと!
ジマット氏の踊りを「観る」時は、その醸し出す雰囲気に酔わされてしまうんですが、一緒に踊るという事は、自分があのジマット空間の一部分になるということ・・・ああ!
本当に軽~く動いてるだけなのに、キャラクターがしっかりと出来あがり、意図するものが伝わって来る氏のすごさ。
一緒に踊っていると、相手役の私は、自分が次にどの位置に歩けばいいか、とか、スピード感の変更具合とか、ピピッ!と通じて来るのです。
御笑いの部分も、「あ!来るな!」というのがわかって、咄嗟に構えられる。
異空間に迷い込んだような感じで、なにやら自分が踊りが上手になったような勘違いを経験させてくれるという、本当に、ものすごい踊り手さんです。
なんとも恐れ多い体験でした。感謝!感謝!
そして少しでもいいから、あのオーラが自分の踊りに欲しい!と強く感じた夜でした。
コメディみたいになっちゃってますが・・・恐妻が「魚取ってこい!」ってかみつく図だわ
踊りは「ぶっつけ本番」の方が良いものに仕上がるから。というジマット氏の見解で、踊りについては、簡単な打ち合わせのみが楽団と行われました。
「手招きしたら、こっちに寄って来て」
「肩に手を載せて、ゆっくり歩きはじめたら、踊り手が帰る合図だから」と、それだけ。
だけれど、古典舞踊曲のアレンジなので、頭の中で唄いながら、なんとか息は合うんです。 合うんですが、仲の良い漁師の夫婦が、仲良く魚を取るイメージで。との事前のコメントだったので、♥ロマンティックな感じ♥?と思っていた私。
まさか氏が、コメディものをイメージしていたとは気付かなかった・・・
そう!コンテンポラリーだからね、飛んだり跳ねたりしなきゃ!ホレ~ッ!
衣装に関しても「漁師だから、頭に布巻いたりしたらいいね。あ、ジャワっぽい服あったら、それ着てきて。あ~、バパは真っ白い服を着て来るから。」と簡単。
さすが踊り慣れてる人は、振り付けも衣装もパパパッ!とイメージが沸くみたいです。何を着ようか~??と、あたふた考える私とは大違い。(自前の衣装をアレンジ)
写真でもボンヤリと判るかと思いますが、全身白いジマット氏は、地下足袋みたいなものを履き、腰には革のベルトといういでたち。。。チューリップ・ハットに欧米人のキャラクターだという仮面。じつは白シャツの腰部分には、こっそりと「蝶々」の刺繍+スパンコール入りなんです。
これは、狙ったものなのか????????
「天才」と「御笑い」は紙一重です(キッパリ)
バリ芸能から御笑いの要素を切り離す事は、絶対にできません(ヤッパリ)
で、大げさでなく、ほんとうに全身白だったんですね、ジマット氏。
金ぴか衣装を用意して行った私は、氏の恰好を見て仰天! 慌てて全身に付けていた金ピカの装飾品を外してから踊りましたよ。 汗水垂らして働く夫から無情に金銭をまきあげて、豪華に着飾る悪妻キャラっていう設定だけは避けねば、と瞬時に判断したので。
さて、無事に大晦日のパフォーマンスを終えて帰宅。 新年の挨拶がてら、日本の家族に「バリ島で一番有名な舞踊家と踊ったんだよ~」と、写真付きで自慢メールしたら、
「数年前は高校生とデュエットってはしゃいでたのに、今は年相応の男性がパートナーやね」
「最初、あんたも仮面つけとるんかと思った。なんか顔デカいよ、また太った?」
と御丁寧な新年の御挨拶が続々と返って来ました。なんとも優しい家族よのう、愛情たっぷりで。
※ 欧米でのコンテンポラリー・ダンスと、日本人が捕らえるコンテンポラリーの表現が微妙に違うように、バリ人のコンテンポラリー(コンテンポレールと言います)もまた、バリ独特の捕らえ方をする芸術表現だ。ということを発見しました。