勘違いさん

aneh

深夜のングーラライ空港に降り立つと、熱帯特有の湿気を含んだ空気がまとわりついてくる。赤道付近は重力も違うのかと思うほどに、のしかかる様な厚みのある重たい空気の歓迎をまず受けるのだ。ターミナルに入ると、「かすかな」とは表現できないほど、はっきりした丁子タバコの匂い、そしてお供え物の線香の匂いとが混じり漂う。竹ガムランのBGMが流れて聞こえはじめると、嫌でもバリの雰囲気が盛り上がってくる。ふと目を上げると、そこにはバリ舞踊の衣装を着た、美しい踊り子の写真がニッコリと微笑んで、ツーリストである私を歓迎してくれる。

‥‥って、違うやん! なんじゃ、このポスターは‥

なんちゃってバリ舞踊の写真が多いんですよ、ほんと。ガイドブックやら看板やら。観光客にとってはバリ風を演出してあれば、細かい事はどうでもいいんですが、でも、ちょっと気になりだすと止まらない。

バリ島の玄関である空港にインド舞踊のポーズと混乱したような、変な体の向きのバリ舞踊ポスターが貼ってあったりしたことも。

街に出れば、あちこちの画廊で「この衣装にこの冠?で、どうしてこの舞踊で花を持つ?」という、微妙なもの。それもバリ人が描いてる絵にもあるんです。描いてる途中に家族から笑われて挫折しなかったんでしょうか。(バリ人すぐ突っ込む)それとも受け狙い?学校で外国人に売れる踊り子絵画の傾向と対策を伝授された?

日本人がアメリカ製のサムライ映画に変な違和感を持つのに似てます。江戸時代のサムライが「大和魂」と描かれた日の丸はちまきを頭に巻き、雪の降る庭で上半身裸になって、わら人形相手に居合い抜きの練習中、敵方の忍者がやってきてヌンチャク振り回す。うーんあまりおかしくないか?

踊り子でなくても、あるんです。本日はバリ島から生中継でーす!なんてローカルのTV番組の場合、司会者がバリの伝統衣装を着るんですが、女性のクバヤ姿は素敵なのに、男性の場合、ウププです。

「普段はムサい人なのに、着用すると120%カッコよく見える!」と言われる魔法の衣装も、他の島の人が着ると80%しかカッコよくありません。なぜか?

ウダンです。変なんです、浅く被り過ぎで。まぁ、ジャワ島からのTV関係者はイスラム教徒が多そうですから、あの浅く被るムスリム帽の感覚でウダンを乗っけたんでしょう。しかしイケテナイ‥

ま、そういうワタクシも、最初の頃は知らずにグルンガンを帽子みたいにかぶり、何度も直されたんですけどね‥

TVドラマでヒロインが恋人に捨てられ傷心のバリ旅行。なんて悲しいはずのシーン。海辺のレストランに座るヒロインに、浮き浮きウダン姿のウェイターが飲み物運んで来ちゃうと、ロケ代ケチって、バリで撮ってないだろ?って意地悪に突っ込みたくなる。それも、そのウェイターが何度も行ったり来たりすんの。通行人エキストラくらいもう一人雇えよ。

ドラマに没頭できず、そんな所ばかり見ちゃうから、私のインドネシア語が上達しないのよね、まったく。