「いま、家に居ますか? わたし、信号機のところにいます。」
早朝、電話のベルで叩き起こされた。
三日後にオダランで踊る事になっているのだけど、その時に演奏をする楽団の若手奏者からの電話だった。
超早起きバリ人は朝の6時とか7時に平気で人の家に来ちゃったりする。
この人は一応、電話を入れてくれただけでも、ありがたい。でも、信号って、すぐそこぢゃんか~!とバタバタと顔を洗っていたら、大家さんが「御盆を持ってきなさい!」と向こうから叫んでいる。
なんと正装姿(パケアン・アダット)で、楽団長さんと太鼓奏者さんが、蓋つきの編みカゴ(ソカシ)を頭にウヤウヤシク載せて現れた。
なんでぇぇぇ???
よく判らないけれども、慇懃丁寧に応対をし、中味を御盆に移し替えて、お辞儀をして、受け取り終了。入っていたのはラワールだった。「今朝バンジャールでラワールを作りました。一緒に村の寺で奉納をするので、楽団の人と同じ物を食べてもらおうと持ってきました。」との説明。御二人はバンジャールがまだ仕事中だからと、自慢の俺製コーヒーを出す間もなく御帰還になったのですが
「これはスゴい!」と、大家さんのお言葉。
「もうプリアタンでは、どこもやらなくなってしまったが、これがバリの伝統にのっとった儀礼なんだよ。」らしい。はるか昔はオダランで奉納舞踊をする時は、寺から踊り子の元にラワールを持って正式に依頼するのが常だったそうで、トペン舞踊家でもある大家さんも、何度か持参された経験があるらしい。
「トペンでなくて、タリ・ルパスなんだけど、コレもらっていいの?」と聞いたら「踊り子は全部もらってた。それに昔は楽団の演奏者の家庭へも一件一件配ったもんだ。今はグンデル奏者くらいしか渡さないけど。」
はい、グンデルは4人だからピザの宅配なみに速攻で可能ですが、30人以上の楽団はキツイかもしれません。ウブドの観光シーズンで道が混んだら、配り終える頃にはラワールが怪しい匂いを放って、食べた演奏者が下痢になって、寺での奉納どこじゃなくなりそう・・・
現在では、このラワールは、寺で頂く食事(ピチャ)や、ナシ・ブンクスの類に形を代えて供されるそうです。
う~ん、今まで踊ってきて、ラワールを頂戴するなんて初めての体験。
バンジャールからの「踊りの正式の依頼」という響きも、なんか特別扱い気分(ほれほれ勘違いが始まった~)で、一般ピープルの私には、くすぐったい。が、めちゃ嬉しい。後日、近所のワルンのおばちゃんから「ラワールもらったって?」と聞かれた。どうも「外人がラワールもらって踊った」のが最近のゴシップのネタらしい。
もしかして、超スゴい事なの?
バンジャールでの評判、あがりまくり?
自慢しまくらなきゃよ~、こりゃ!
と、有頂天の私。
よく考えたら、家庭にラワールを持ってくるというのは頻繁にあるけど、「個人」でラワールをもらうなんて機会は無いのですよね、あんまり。そう考えたら、うん、驚きです。
驚きついでに、「普通はサテは5種類×1本づつ=計5本」らしいです。写真は大家さんにオスソワケ後に撮ったのですが、ラワールもサテも写真の3倍は入ってました。白ご飯だけは1人前だったのに、サテ20本以上あった・・・そんな肉をガツガツと喰らいそうなイメージなんでしょうか、私。
楽団との練習に行く時、おでこに「肉」って書いてたんでしょうか?まったく記憶に無いんですが・・・
ラワールもらった!と自慢しても、最後はやっぱ、私はソッチ路線に落ちてしまうんですね・・・ああ可哀そうな あたくし の運命や如何に・・・