トゥット・チャの魔法の手(バリ舞踊メイク)

トゥット・チャ(Tut Cha=Ketut Suardana)は、プリアタン村タガス地区出身の踊り手、そしてバリ舞踊の先生であるが、バリのメイクアップ・アーティストとして、より知られている。

Balinese Makeup Artist Tutca
バリ・メイク・アーティスト K@-cha Collectionのオーナー「トゥット・チャ」

トゥット・チャがバリ舞踊のメイクを手掛け出したのは、1999年。その頃教えていたARMA美術館の子供達のグループが、バリ芸術祭に参加する事になり、人手が必要であったからだ。これをきっかけに、彼はプリアタン村の中のあちこちの楽団、例えばバレルンのグンタ・ブアナ・サリ楽団などで化粧を手伝う事となる。

次第に、彼のメイクの評判が口コミで伝わり、バンジャールや村のお祭り、学校の子供達の発表会など、バリ舞踊のメイクが必要となると、声がかかるようになった。
それだけではない、ついには、インドネシア芸術大学デンパサール校(ISI Denpasar)舞踊科の卒業試験を受ける生徒から、試験の時の化粧を頼まれるようにまでなったのだ。衣装や化粧は試験の評価に影響するので、美しい顔が重要なのだ。

Balinese Makeup Artist Tutca
レゴン舞踊のチョンドン・ダンサー:メイク by トゥット・チャ

彼の妹が結婚をする時、はじめてバリニーズ・ウェディングの化粧にチャレンジしてみた。仕上がりは、思ったよりも良かった。
この時から彼は、バリの結婚式の伝統的なスタイルや、トレンドを追った化粧などを研究し、自分のスタイルとして取り入れていった。
それから8年。今では、バリ舞踊よりも、ウェディングの化粧の依頼で引っ張りダコとなっている。
多い日には1日に4組、御色直しがあるので、合計8回も新郎新婦の化粧と衣装を整えた。
バリの結婚式は、儀式が早朝5時には行われるので、深夜2時からのメイクとなる。
さすがにこの時は疲れが酷く、翌々日には低血圧のために病院に行ったそうである。

Balinese Makeup Artist Tutca
バリニーズ・ウェディング用のメイクと衣装 by トゥット・チャ (photo f studio)


トゥット・チャは、mayumi inouye ( m ) のメイク・アップの先生でもある。
機会があるごとに、トゥット・チャは m にメイクの技術や、今の舞踊界の流行の色などを教えてくれる。しかし、馬鹿な生徒である m は、なかなかメイクの腕が上達しない・・・。

Balinese Makeup Artist Tutca
m の顔に化粧をするトゥット・チャ


小学生から中学生の頃にかけて、トゥット・チャは、プリアタン村タガス・カンギナン地区の楽団、「グヌン・ジャティ」の踊り子であった。
また、セミ・コンテンポラリー舞踊で有名なサルドノ氏の元でチャック・リノにも所属していた。
トゥット・チャの祖父は、イ・マデ・ダナという「グヌン・ジャティ」の太鼓奏者であり、芸術家としての血を引いているのだ。

Balinese Makeup Artist Tutca
バリ舞踊を踊るトゥット・チャ(資料:トゥット・チャ)

小学2年生の時から、トゥット・チャはステージに立っていた。バリス舞踊の踊り手として、グヌン・ジャティと共に、日本へ公演に行った事もある。
ほぼ毎年のように、この楽団と海外ツアーに行き、海外での公演経験は、8回を数えるそうだ。
もちろん、この頃は、まだ自分でバリ舞踊の化粧を出来る技術はなかった。トゥット・チャの顔にメイクを施してくれたのは、ボナ村のシディオ氏、タガスのバドゥン氏とムルニ婦人だった。


ところで・・・
この記事の上から2番目に置いたチョンドン・ダンサーの写真、実は男性だという事に、あなたは、お気付きになったであろうか?
写真はグンタ・ブアナ・サリ楽団(Genta Bhuana Sari)が、男性によるレゴン舞踊「レゴン・ジャヤ・パングス(Legong Jaya Pangus)を上演した時のもの。

Balinese Makeup Artist Tutca

これが、トゥット・チャの魔法の手によるメイクの効果なのである。
踊り手はアデ・カマンダヌと言い、小学6年生のころからバリス舞踊などの男性舞踊メイクをトゥット・チャの手で手伝ってもらっていた。

Balinese Makeup Artist Tutca Balinese Makeup Artist Tutca
バリ舞踊メイク ビフォーアフター

トゥット・チャが初めてアデを化粧したのは、プリアタン村バンジャール・トゥンガー地区の楽団が、観光客のための定期公演を行っていた頃だ。
その頃、プリアタン村では、毎日どこかで定期公演が行われていた。
村内のバンジャールが、それぞれの楽団で活動していた。バンジャール・タガス・カンギナン楽団、バンジャール・タガス・カワン楽団、バンジャール・カラー楽団、バンジャール・トゥンガー楽団、バンジャール・タルナ楽団、そしてバンジャール・トゥブサヤ楽団。
これに、グヌン・サリ楽団、ティルタ・サリ楽団、ムカール・サリ楽団、ケチャのスマラ・マドヤが加わり、それは賑やかであった。
その当時のプリアタン村で、トゥット・チャは踊り子の化粧に走り回っていたのであった。

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これも男性!:メイク by トゥット・チャ

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